<迎賓館> 猪苗代湖畔

 旧高松宮翁島別邸(以下「別邸」という)は、大正天皇第三皇子・高松宮宣仁親王殿下(たかまつのみやのぶひとしんのうでんか)が、喜久子妃殿下の母方祖母に当たる有栖川宮威仁親王妃慰子殿下(ありすがわのみやたけひとしんのうひやすこでんか)の御保養のために、大正11年に建設されたものである。

 既に、有栖川宮別邸としてルネッサンス様式を取り入れた洋風建築・天鏡閣(明治41年建設)はあったものの、高松宮宣仁親王殿下は御還暦前の慰子妃殿下を気遣われ、御用地内で猪苗代湖を南東面にひらき、磐梯山を北面に望む、天鏡閣の南方位300mの一段低い景勝の地を御選定され、自然石を基礎とし、自然の景観を庭園に見立てた純日本風のたたずまいを有する別邸を1年余りの歳月をかけて完成させた。
 
 また、旧高松宮翁島別邸は、洋風建築別邸の(天鏡閣〉と共に、教育・文化の興隆に活用する趣旨のもと、昭和27年12月、高松宮殿下より福島県に御下賜され、福島県迎賓館として今日に至っている。建物の建築構造は入念にして堅実、その意匠は洗練され、建築史的・文化史的にも貴重なものであることから、平成11年5月に国の重要文化財に指定された。古い伝統的和風住宅の様式に準拠して建てられた皇族別邸として、全国的にも珍しい遺稿であり、福島県では保存・保護を図りながら、貴重な文化遺産を継承していくため、庭園を公開している。さらに、国の文化財としての価値を紹介するため、期間限定で特別公開を実施している

■木造平屋建て589.7(178坪)で、総体に江戸時代の上層貴族住宅、上層武士住宅の姿を伝えている。個々の建築構造は、入念にして堅実、その意匠は洗練され、妃殿下の御安息所にふさわしい典雅にして格調高いものになっている。
 造作材は、檜を主体とし、杉・赤松・欅を使い、柾目(まさめ)・杢目(もくめ)の貴重な銘木を多く用いている。
 主要座敷の意匠のうち、釘隠しや、襖類の引き手には高価な金具を用い、建物の内部に気品を添えている。また、床の間・床脇・欄間・書院・入側縁廊下・雪見障子等は、技術の粋を尽くした芸術品である。
竹の節欄間:中央廊下最上段には、妃殿下ご出身地に近い輪島の漆塗りで施された飾り欄間が、賓客を優しく迎え入れる。

松の間松の間梅の間
上下二室より構成される。檜材四方柾の直線的な自然美から、座敷境の筬欄間(おさらんま)・輪郭を施す框(かまち)の工芸美をひきだしている。床の間造作材の年輪層曲線から花頭窓・建具類の面取りなど女性のたたずまいを印象づける。




竹の間梅の間
内居間としての機能を持つ休息所である。松の間同様、壁に美濃紙を張り、押し縁を付けるが、この押し縁をはじめ、欄間の框・床框(とこかまち)・襖類の縁などすべて朱漆塗りを用い、ひかえめな平書院とあわせ、女性の書斎にふさわしい空間を演出する。

竹の間
数寄屋風造り。壁に窓を穿(うが)ち、地下窓風の意匠から侘(わび)・寂(さび)の、茶の湯の世界へといざなう慰子妃殿下の私室である。
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